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Column
2000.06.13

情報エクスペリエンスをデザインする

インターフェイスとインタラクション

我々が道具や機械に触れる時、そこにはインターフェイスが介在している。単純な道具の場合、インターフェイスはその道具の形状や機能と密接に関係しており、椅子やテーブルのように、インターフェイス自体が機能そのものである場合もある。一方コンピュータのように、複雑な回路を経由して様々な機能を提供する機械では、非常に複雑な入出力の機能が必要とされるため、マウスやピクセルマップディスプレイといった外部デバイスがユーザの直接触れるインターフェイスとなっている。

Mac OS や Windows といった GUI によるオペレーティングシステムは、画面上に表示されるアイコンやメニューといった目に見えるオブジェクトを擬似的に情報処理のための操作対象としている。そして手の延長として扱われるマウスを使い、ユーザが直接情報を触ったり移動したりできるような感覚を作り出す。そのため、これもまたインターフェイスと言うことができる。オンスクリーンのインターフェイスである。

インターフェイスの概念図

インターフェイスの概念図

デジタル信号という実際には目に見えない無形の情報を、デスクトップメタファーという疑似的な世界の中であたかもユーザが直接操作しているように錯覚させることによって、コンピュータの仕組みについてあまり知らない人であっても簡単に作業したり学習したりできる。そのため一般に広く受け入れられるようになった。

コンピュータのディスプレイ自体は(角度や向きを調節する部分以外は)もちろん駆動部品ではなく、あくまでスクリーン上の各ドットが電気的な処理によってその色を変化させるだけだが、それを見つめるユーザのメンタルモデル(概念上の認知)においては、直接手を触れることのできるオブジェクトの集合として存在しているのである。

あるフォルダの上にマウスカーソルを合わせてダブルクリックをするとそのフォルダが開いて中身が表示されるというように、ユーザの操作に随時反応してプログラムが展開されることをイベント駆動型といい、各オブジェクトが独立して機能し、ユーザの自由な操作によってあらゆる順序でタスクを実行できることが理想となる。

ユーザによる操作に対して、スクリーン上のソフトウェアがどのように反応するかによって、そのソフトウェアの評価が決まる。常にユーザの期待に応えるように反応するということがユーザの希望であり、そのソフトウェアの目的でもある。そのためにソフトウェアの開発者はユーザの求めるものを研究し、その期待に応えるためにコンピュータの処理をうまく制御するよう努力しなければならない。その結果として、ユーザとコンピュータとの間にソフトウェアによるインターフェイスとインタラクションが生まれる。

プログラムはその機能や操作対象をうまく視覚化して、ユーザが直接操作できるようにしなければならない。このユーザが触れる部分がインターフェイスである。視覚的に表現されるボタンやウインドウは、ソフトウェアの機能や操作を直観的に伝えるためにうまくデザインされる必要がある。またユーザの操作などによって発生するイベントと内部的な処理を結びつけるプログラムの構成要素などもインターフェイスと呼ばれることがある。

ユーザの操作に応じて正確にデータを処理し、ユーザがそれを確認できるようにフィードバックする、あるいはユーザを楽しませるために視覚的、聴覚的な演出を加えたり、ユーザが次の操作をしやすいように誘導するといったユーザとコンピュータとのやりとりをインタラクションという。インターフェイスに対するインタラクションの概念は、Clement Mok の「Designing Business」を参考にすると、以下のような図にすることができる。

インタラクションの概念図

インタラクションの概念図

また、Brenda Laurel の「Computers as Theatre」では、インターフェイスを通した人間とコンピュータの関係(ヒューマン-コンピュータアクティビティ)を以下のようにシンプルな図で表現している。

ヒューマン-コンピュータアクティビティの概念図

ヒューマン-コンピュータアクティビティの概念図

連続するアクションと情報エクスペリエンス

オンラインのソフトウェアまたはサービスのシステムとユーザの関係を考える時、デザイナーと開発者が考えなければならないもうひとつ重要な要素は、時間である。

ユーザは必要とされるタスクを完了するまでに、いくつかの連続したインタラクションを経験するのが普通である。例えば、ワープロソフトで文書を作成する場合、「アプリケーションの起動→新規書類の作成→文書のタイピング→ファイルの保存→アプリケーションの終了」といった作業手順を踏むことになる。ウェブで目的の情報を閲覧する場合であれば、「検索ページを開く→キーワードを入力→検索実行→検索結果から適当なリンクをクリック→目的の情報を閲覧(あるいは検索ページに戻って再度検索)」という大まかな手順を踏む。

理想は、なるべく少ない手順でユーザの最終目的を達成させることである。そのためには、ユーザが素早くその操作方法を学習し、快適に手順を踏んでいけるようにしなければならないが、そこでいくつか注意しなければならないことがある。

あらかじめ想定されるユーザのアクションに対応する複雑な条件分岐の中からできるだけ少ない手順で最終結果を出そうとすると、どうしても一回の分岐数が多くなってしまう。ユーザが判断すべき選択肢が多くなれば、操作は複雑になり、それに伴いユーザの精神的な負荷も大きくなる。その結果エラーも増えることになる。うまくいけば短時間で最終目的に到達するが、途中で失敗すればかえってユーザを混乱させてしまうので、操作に慣れていない初心者には不向きである。逆に、一回の分岐数を減らして単純な操作の繰り返しにすれば各分岐におけるユーザのストレスは軽減されるが、最終目的に到達するまでに時間がかかってしまう。時間がかかるとユーザの緊張感を持続させるのが難しくなり、手順も増えるので、結果的にエラーが増大し、上級者であればあるほどストレスを感じるようになる。

つまり、ターゲットとなるユーザの習熟度に合った習熟曲線を実現するようにインターフェイスとインタラクションは設計されなければならず、そのバランスがくずれれば、誰にとっても使いづらいものになってしまうのである。そのバランスがうまくいっていれば、多少手順が多かったとしてもユーザはそれを感じないし、ストレスなく目的の結果が得られれば、それだけ満足度が上がることになる。たとえ当初の目的が達成されなかったとしても、そこから別の利益を得ることができれば、ユーザはよい経験をしたと感じさせることができる。

Brenda Laurel は「Computers as Theatre」の中で、コンピュータを利用するユーザがタスクを完了するまでの間に経験する心理的な変化を演劇理論を用いて分析している。目的を達成するまでの間にユーザは、期待したり、裏切られたり、緊張したり、解放されたり、満足したりする。こういった時間軸にそったユーザの経験は、そのままそのアプリケーション(またはサービス)に対する印象、つまり主観的評価そのものになる。

従来のアプリケーションソフトウェアと、ウェブやオンラインサービスの性質の違いは、前者が機能を中心として設計されるのに対し、後者はドキュメント(情報)を中心に設計されることである。ユーザが求めるのは機能ではなくコンテンツであり、必要なコンテンツにユーザを導くための機能は、なるべくユーザが意識しなくてもよいものであるべきである。Donald Norman は、理想のインターフェイスの形というものを否定し、インターフェイスは透明で見えない(意識しなくてもよい)ものであるべきだと言っているが、そのことがまさに重要視されてきているのである。

そこで我々がデザインするものが見えてくる。我々がデザインするのは、機能やコンテンツや情報の構造だけでなく、それらをユーザが経験する時間軸から複合的に見た情報エクスペリエンス(従来ユーザエクスペリエンスと言われていたものに、コンテンツを中心とした新しいメディアの性質を加えたもの)なのである。

情報エクスペリエンスの概念図

情報エクスペリエンスの概念図

バランスのとれた情報エクスペリエンスは、平面デザイン上の理論やソフトウェア工学上の理論に縛られすぎていては実現さない。広範なユーザテストとユーザトレンドの分析を元に、膨大な設計上のトレードオフをひとつひとつ行っていくことによってのみ作り上げることができるのである。その意味で、デザインとはトレードオフの集合体であり、我々が考慮しなければならない要素は増えるばかりである。今後このコラムでは、それらについてひとつずつ考えていきたいと思う。


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2000.06.13
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