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Column
2000.09.10

トップページの役割

企業のウェブサイト制作を請け負っていると、サイトの立ち上げやリニューアルの際にまずトップページのデザインを提出するよう求められることが非常に多い。こちらの話の進め方やクライアントのウェブに対する認識レベルにもよるが、まるでポスター広告のデザインを発注するようにウェブの制作を依頼してくるのである。そんな場合こちらとしては先方の予算やスケジュールを考慮しながらウェブサイトの開発に必要なプロセスとその目的意識を共有していくわけだが、中にはコンペティションと称してトップページのビジュアルデザインだけでウェブ制作の発注先を決定する企業もあるようである。

あやふやなトップページ

目的や予算、ターゲットや発信する情報の種類などが何も分からないままデザインすることほど辛いことはない。そしてそのような依頼の仕方をされたデザインは、必ずと言ってよいほどクライアントには気に入ってもらえないのだ。なぜなら満たすべき要項がそもそも定まっていないのだから、クライアント側にしても評価の基準がないのである。だからそのような依頼のされかたをした場合は、思い切ってその仕事は断ってしまった方が良い。後になってコスト割れなどのトラブルが起きるのは、その時点でもう見えているのだ。

それでも最近は、企業側もウェブサイトの利用価値を少しずつ認識してきているようで、あるいは世間で「必要だ」とされているのを理由に、多くの予算が企業のウェブサイトに割かれるようになってきた。大きな投資をするわけだからそれなりに複雑で大規模なものができあがらなければいけないとでもいったように、経営サイドへのコンサルティングや情報デザインを伴ったページ構成案、マーケティング面にアピールする企画、システム管理に対する技術的な提案や広報を説得するためのビジュアルおよびコピーライティングのブランディングなど、実に様々な戦略を混ぜ合わせて一冊の分厚い提案書が作成される。そしてその提案書と共に、一枚の画像データがクライアントに提出されるのだ。トップページのデザイン案である。

このことが必ずしも悪いというわけではない。確かにトップページには全てがある。また全てがなければいけない。トップページはサイト全体を縮小したものであり、ウェブサイトとは企業を縮小したものなのだから。ユーザが最初に目にするのはトップページである。本に例えれば確かにトップページは表紙の役割を果たすし、映画に例えればオープニングのタイトルクレジットである。そのトップページがあまりにつまらなそうであったり、役に立たなさそうであれば、ユーザはすぐに別の URL へ行ってしまうだろう。そして二度と戻ってこないかもしれないのだ。

しかしトップページのデザインだけではウェブサイト全体を評価することはできない。ユーザビリティの高いウェブサイトには、コンテンツ、情報アーキテクチャ、ナビゲーション、ブランディングといった要素がそれぞれ互いにバランスを取り合い、高いクォリティを維持していなければならない。トップページのデザイン案で評価できるのはその内の、ブランディングと情報アーキテクチャの表面的な一部分だけである。そのため、もし企画の初期の段階でトップページのデザインがクライアントの要望を満たしていても、制作側はなるべく早い段階でコンテンツやナビゲーションについてのガイドラインを設定してプロトタイプを作成し、クライアントとその方向性を共有すべきである。また、各サブサイト(あるいは主要なカテゴリー)については情報アーキテクチャの観点から適切なラベリングを行い、最終的なグラフィックの制作に入る前にそれを決定しておくことが必要だ。(デザイナーにとって、メインタイトルの文字数が変更されるということはデザインのやり直しを意味する。)

企業の CI を正しく反映してロゴや色調を整え、ユーザにとって利用しやすいように情報を構成し、誰もが簡単に目的の情報にたどり着けるようなナビゲーションインターフェイスを組み込んで、ウェブに最適化された編集方法でのコンテンツ作成が一段落したら、いよいよトップページに帰ってくる番だ。サイト全体に対するトップページの役割をもう一度よく考え、機能性とシンプルさ、インパクトと安定感という、デザイナーにとって最も興味深いトレードオフへの挑戦をはじめよう。

トップページは本当に必要だろうか?

その前に、トップページというものの存在についてもう少し考えてみたい。トップページ(あるいはホーム、ホームページ、フロントページ)というものの必要性について、私は多少の疑問を抱いている。トップページというものは本当に必要なのだろうか?ユーザが最初に目にする画面という意味で、トップページにあたる URL は必要であろう。それは会社に代表の電話番号が必要なのと同じである。しかしウェブサイトをソフトウェアアプリケーションとして捉えてみれば、現在一般的に用いられているトップページの利用方法はその可能性のほんの一部でしかない。アプリケーションはユーザに機能を提供する。ユーザはその機能を利用して何らかの生産活動を行うのが普通である。つまり何も無いところから何かを作り出すのであって、新規に作成したワープロ書類の画面には真っ白な入力エリアが広がっているし、初めて起動した Macintosh のデスクトップではいくつかのアイコンが端の方に並んでいるだけで基本的には空白なエリアが画面の大部分を占めている。何もないところにユーザのアクションに応じて何かが現れることにより、ソフトウェアの機能がユーザに解放されていることを表しているのである。しかし一般的なウェブサイトは、機能ではなくコンテンツの提供をその主な目的としているため、ユーザがサイト利用における生産性を実感することはほとんど無いと言えるだろう。ユーザが求めるのは情報であり、サービスであり、たとえインタラクティブに情報をカスタマイズ、あるいは双方向コミュニケーションできたとしても、ユーザにとってそれは「出来合いのプラットフォーム」といった感を否めないのである。そこには情報・サービスの提供側が何らかの自己主張をしたいという意志をもってサイトをデザインしているという現実があり、提供する側によって意図されたコンテクストが、純粋に情報・サービスを享受したいというユーザの行動を邪魔してしまう恐れが常にあるということである。

また、一定以上の規模のサイトは必ず、情報のツリー構造を持っている。そのために必然的にツリーの一番先端となるトップページが必要になる。これは多くの情報を分類し、大きなカテゴリーから徐々に目的とする対象を絞り込んでいくというユーザの検索手順を反映しているわけだが、ドキュメントの分類法という観点からすれば、全ての情報は必ずしもツリー構造には当てはまるわけではない。情報をツリー構造に当てはめるためには、すべてのカテゴリーが互いにその意味を重複せず、また同じ階層に存在するカテゴリーではその重要度や情報量、範囲の広さなどが揃っていなければならない。しかしある情報が持っている意味や価値は、それを利用する者の主観や状況、経験の度合いなどによって変化するものであるため、ひとつのドキュメントを絶対的にツリー構造の中に分類することはできない。たとえドキュメントの制作者がひとつのコンテクストに沿ってできるだけ論理的に分類したとしても、そのコンテクストを理解していないユーザにとっては意味をなさないし、そのように論理的に全てのドキュメントを作成するのは、企業のウェブサイトなどでは現実的ではないのが普通だ。

こういったことから、私はトップページのあり方についていろいろと考えてきた(実際、画面のほとんどが真っ白というトップページを提案したこともある)。しかしどうやら時すでに遅し、ユーザのウェブに対するメンタルモデルには「地理的移動概念」が強く形成されており、彼らには移動の出発点となる「トップページ」が必要なのだ。だから我々はトップページを作らなければならない。突飛なことをしてはいけないとは言わないが、それよりも重要なのは、如何に素早くシンプルなメンタルモデルをユーザに与え、またすでにユーザの中にあるウェブに対するメンタルモデルを如何に捉えるかである。おかしな(しかし一般的な)インターフェイスを期待するユーザにはなるべくそれに矛盾しない形で正しい方向に修正してあげなければならない。

一般的なトップページ

そこで、一般的なトップページのタイプを考えてみよう。ほとんどのサイトのトップページは以下に分類されるタイプのどれか、またはその複合型になる。

インデックス型

Yahoo などのいわゆるディレクトリ系サイトに代表されるタイプである。トップページがそのまま目次になっている。サイト内の情報構成を表現して、サイトマップとして機能し、その中で好きなところに直接ジャンプできるようにする。5年前にはほとんどのトップページがこのタイプだった。しかし、GUI 的なビジュアル効果を狙いサイトに統一感を持たせるという理由から全ページに共通するナビゲーションエリアをヘッダやページの左側に配置するデザインが一気に広まったため、トップページではナビゲーションエリアとコンテンツとしてのサイトマップが機能衝突(コンフリクト)するという問題が発生するようになった。そのためトップページだけには通常のナビゲーションエリアを設けないというデザインが多く生まれたが、それではユーザが最初に見る画面(トップページ)と次に見る画面(通常のページ)でインターフェイスが変わってしまうため、統一感を持たせるという目的が全く果たされない。インデックス型では Yahoo のように「パン屑式」のナビゲーションが一番良いだろう。

What's New 型

ニュースサイトなどの速報性を重要視するサイトに代表されるタイプである。また、構成の単純な個人サイトでもよく見られるタイプである。What's New という言葉は「最新情報」と「更新履歴」の二つの意味で用いられることがあるが、基本的にはリピータをターゲットにしており、サイト内に蓄積された情報ではなく、最新情報を求めるユーザには非常に便利なトップページとなる。サイトの成長がそのままユーザに見えるため、頻繁な更新がユーザの興味を繋ぎ止める。しかしサイト全体から見た情報の構造や各情報の重要度の表現に欠けるため、大規模なサイトではナビゲーションインターフェイスやサイトマップを併用する必要があるが、インデックス型と違って機能衝突は起こさない。(ちなみに Infoperience のトップページはインデックス型と What's New 型の複合型である。)

プロモーション型

企業などの大規模なサイトでよく用いられるタイプ。全ページに共通するナビゲーションインターフェイスの導入によってトップページに多くのエリアが確保されたため、そこに企業側からのコンテクストを詰め込むことができるようになった。たとえば新発売されたノートパソコンのページに直接ジャンプさせるために派手なプロモーション画像をページの中央に配置するといったことができる。普通にナビゲーションインターフェイスを使ってそのページまで移動しようとすると「トップページ→製品→ハードウェア→ノート→新製品紹介ページ」と4回もクリックしなければならないといったところが1回のクリックで済む。常に同じ場所にナビゲーションインターフェイスがあるので、プロモーションエリアは特定の情報を短期間だけ掲載し、頻繁に更新しても操作性は損なわれない。また、What's New のようなエリアを併設したり、その他のトップページにだけあればよい情報と組み合わされていることも多い。はじめて訪れるユーザとリピータの両方をターゲットにでき、重要な情報は何か、最新の情報は何かといった複数のコンテクストを共存させることができる。しかしその反面、情報量や各エリアのインパクトなどのバランスをうまく取らないと、散漫で捕らえどころのないページになってしまう。企業側の見せたい情報とユーザが自由に利用できるナビゲーション機能(あるいは検索機能)をうまく両立することが、お互いにメリットを得るための必要条件である。

肩の荷を降ろす

WWW の普及により、企業と消費者との接点がウェブサイトに一元化されてきている。そのため、トップページに求められる役割は膨大である。CI(ブランディング)、サイトナビゲーション(全ページ共通の機能)、サイトの趣旨や運営者の紹介(アイデンティファイ)、注目してほしいトピック(プロモーション)、検索機能やサイトマップへの誘導(必要な機能)、一定期間目目立たせる必要のある情報(ピリオディカルな情報)、What's New(最新情報・更新履歴)などなど。しかしこれら全てをバランス良く詰め込むのは非常に難しい。そのサイトの利用方法や利用価値についてよく知っているユーザをターゲットにしているのでない限り、あらゆるユーザをターゲットにしたトップページは、誰にとっても利用しづらいものになってしまう。

もしあなたの企業が自社の CI を効果的にウェブで表現したいのであれば、トップページをシェイプアップし、ダウンロード時間をできるだけ短縮させることが重要だ。なかなか表示されないトップページほどその企業の CI を傷つけるものはない。トップページに必要な機能が即座に表示されれば、ユーザはあなたの企業から「ユーザに優しい」という CI を感じ取るはずだ。ユーザにとってトップページは、そのまま企業をあらわすのである。


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